モデルベース開発(MBD)の基礎知識

2023年06月21日

  • モデルベース開発(MBD)
近年の自動車をはじめとするモビリティ業界において、「CASE(※)」というキーワードが注目されています。

自動車の制御システム開発は、「CASE」の対応が進むにつれて、より複雑で大規模なシステムを、今より短期間で効率よく行うことが要求され、従来の開発方法では対応が困難な状況になりつつあります。

そこで、従来の開発プロセスに取って代わる形で「モデルベース開発」が主流になってきています。

モデルベース開発とはなにか、導入時のメリットや注意点について、説明します。
※ CASEとは、「Connected(コネクテッド)」、「Autonomous(自動運転)」、「Shared & Services(シェアリング/サービス)」、「Electric(電動化)」の頭文字からなる造語です。

モデルベース開発(MBD)とは

モデルベース開発とは「モデルを基礎とした開発」のことを表します。英語では「Model Based Development」と表記され、その頭文字を取ってMBDとも呼ばれます。具体的には「実在の制御システムと制御対象をMATLAB/Simulink(※)でモデル化し、コンピューター上でシミュレーションを繰り返しながら進める方法』と言い換えることができます。
※ MATLAB/Simulinkとは、MathWorksという会社が制作しているソフトウエア名称です。

モデルベース開発のメリット

モデルベース開発は、「現実」のものや環境を「仮想」の「モデル」に置き換えることが最大の特徴です。「モデル化」によって、制御システム開発にどのようなメリットが期待されるのでしょうか?

モデルベース開発がもたらすメリット

  • 要件、設計を「モデル化」するため(※)、開発の各工程を「モデル」で統一、共有が可能。
  • 設計、開発段階でシミュレーションを行うことで、実機や試作にかかる期間やコストの削減が可能。
  • モデルを自動でコード変換(プログラミング言語化)ができるため、コードの手入力によるミス削減が可能。
※ MATLAB/Simulinkなどのモデルは、複雑な演算や処理をブロック線図で表現でき可読性が良いため「動く仕様書」とも言われています。
従来の開発V字モデル
従来の開発V字モデル
MBD導入後の開発V字モデル
MBD導入後の開発V字モデル

モデルベース開発導入時のポイント

モデルベース開発の導入は、「モデルによる情報の共有、共通化」「実機、試作期間、コスト削減」「自動コード生成による手入力ミスの削減」という明確な効果が期待されます。導入して運用が定着した後は、試作、テスト工程の業務が減少することになる可能性が高いですが、定着するまでの期間は、設計、開発工程の業務が増加することが予想されます。そのため、モデルベース開発の導入を検討する際は、開発部門全体に何らかの影響があることを理解し、部門全体で取り組む必要があります。

モデルベース開発導入時のポイント

  • フロントローディング(※)によるリソース不足を想定した人員計画を立てる
  • モデルを作る/扱うための知見を持った人材が全工程に必要
  • 工程間でモデルの取り扱いに対するルールが必要(インターフェース仕様、バージョン管理など
  • 「過去の資産」(従来の仕様書やソースコード)の「モデル化」も必要に応じて行う。
  • 開発全工程での一括導入は困難なため、部分的なところからの導入を検討する
※ フロントローディングとは、開発工程の中で、前倒し可能なものを初期段階で行うことです。
三栄ハイテックスは、いち早くモデルベース開発を導入して研究、開発を行っています。

モデルベース開発を活用した新しい提案や、自社のモデルベース開発の研修カリキュラムによるモデルベース人材の育成などを通じて、さまざまなお客さまのニーズにお応えするよう取り組みを続けております。