CentOS Linux 8のサポート終了に伴う代替対応(移行先OSの検討)

2022年09月21日

  • ITインフラ
CentOS Linux 8サポート終了に伴う、代替ディストリビューションの検討プロセスについて紹介します。

CentOS Linuxは、エンタープライズ市場からパーソナルな分野まで幅広く利用されています。
その理由として、以下の3つが挙げられます。
  • Red Hat Enterprise Linuxと高い互換性を持ちながら、無償で使うことができる
  • 有償OS並みの長期サポートと機能を備える
  • 業界のスタンダードである

CentOS Linuxは、CentOS 8をもって2021年12月31日にサポート終了となりました。これに伴い、CentOS Linuxから新しいLinuxOSへ移行しなければならなくなりました。移行先の選定には、CentOS Linuxで運用しているサーバーのセキュリティー対応や今後の機能・性能向上対応を考慮する必要があります。

LinuxOSには、さまざまなディストリビューションが存在します。どのディストリビューションを選択すればよいかを、「機能面」や「使いやすさ」、「移行のしやすさ」等の観点から検討を進めました。

代替ディストリビューションを選択するポイント

利用中のサービスが提供しているディストリビューション

利用中のサービスとの親和性から、そのサービスがパッケージ提供している対象ディストリビューションを選択します。
今回は、Zabbix(サーバーやネットワーク機器の死活監視サービス)が提供しているディストリビューションを例とします。

Zabbixディストリビューション・パッケージ

Zabbixは以下を対象として、公式RPMおよびDEBパッケージを提供しています(Windowsは非対応)。
  • Red Hat Enterprise Linux
  • Debian
  • Ubuntu

ディストリビューションの選択

Zabbixディストリビューション・パッケージの特徴

Zabbixがパッケージ提供しているディストリビューションごとに、その特徴を調べました。

Red Hat Enterprise Linux

Red Hat Enterprise Linuxは、有償ディストリビューションです。
CentOS Linux は、Red Hat Enterprise Linuxの完全互換を目指していました。

CentOS Linux後継で主力となっているのは、次の4種のディストリビューションです。
  • AlmaLinux
  • Rocky Linux
  • Oracle Linux
  • MIRACLE Linux
Oracle Linux、MIRACLE Linuxは有償ディストリビューションのみの提供です。有償であれば、Red Hat Enterprise Linuxを採用したいところです。

有償版と無償版が存在するのは、AlmaLinuxとRocky Linuxの2種です。

Debian

Debianは、サーバー用途で利用されており、OS自体の安定性が強みです。
ただし、Red Hat Enterprise Linuxとの互換性がありません。CentOS Linuxで利用するコマンドや設定ファイルの配置、記述方法などの違いにより、使い勝手が少し変わります。

Ubuntu

Ubuntuは、Webサイト向けLinuxトップシェアです(2022年5月時点)。
また、クライアント版で利用される傾向があります(Ubuntu自体はDebianの派生)。
UbuntuもRed Hat Enterprise Linuxとの互換性はありません。CentOS Linuxとは、使い勝手が異なります。
Zabbix用サーバーの代替ディストリビューションの選択条件は、以下の通りです。
  • 無償版で利用できること(有償版への切り替えが可能であること)
  • 運用・管理に関するナレッジを流用できること
無償版があり、CentOS Linuxに近いシステム構成を持つディストリビューションを採用する方針としました。この方針には、AlmaLinuxとRocky Linuxの2つが該当しました。

次項では、AlmaLinux、Rocky Linuxを比較します。

ディストリビューションの比較(AlmaLinux、Rocky Linux)

AlmaLinux、Rocky Linuxの特徴をまとめました。
  AlmaLinux Rocky Linux
開発コミュニティー The AlmaLinux OS Foundation Rocky Enterprise Software Foundation
運営方法(サポート) コミュニティー主体 コミュニティー主体
RHELとの互換性 1:1のバイナリ互換性 ※1 バグをも含めて 100% の互換性
サポート期間 2029年まで予定 2029年まで予定
対応アーキテクチャ x86_64、ARM64 x86_64、ARM64
CentOS Linux 8からの移行ツール
提供方法 無償ダウンロード提供 無償ダウンロード提供
商用(有償)サポート 有(TuxCare by CloudLinux Inc) 有(CIQ)
URL https://almalinux.org/ https://rockylinux.org/ja
※1:コンパイル済みのプログラムをそのまま移行して実行できるレベルの互換性
AlmaLinux、Rocky Linuxのどちらを選んでも差異がないことがわかりました。
今回、CentOS Linuxの代替ディストリビューションとして、従来のノウハウやナレッジが流用できるAlmaLinux、Rocky Linuxの2種から選ぶことにしました。その結果、200ユーザーを超える企業向けファイルサーバー構築案件として導入/稼働実績があり、当社での運用管理ノウハウも蓄積されているAlmaLinuxを採用しました。

AlmaLinux、Rocky Linuxはインターネット上の情報も豊富で、関連書籍も出版されており、今後の運用でも十分利用できるものと判断しました。