モデルベース開発(MBD)の可能性と導入のポイント

2024年07月26日

  • モデルベース開発(MBD)
モデルベース開発(MBD)の重要性とは?
近年、自動車業界を中心に「CASE」(Connected[つながる], Autonomous[自動運転], Shared & Services[シェアリング], Electric[電動化])というキーワードが脚光を浴びています。特に自動車の制御システム開発は、これらの技術の実現に向けて大きな転換点を迎えています。
この革命を先導するのが「MBD(Model-Based Development:モデルベース開発)」です。

モデルベース開発とは?

従来の開発手法とMBDの違い
従来の「実際にパーツを創って組み合わせ、試作品として動かしてみる」という手法に対して、モデルベース開発は「現実」を「仮想モデル」で表現する手法です。
具体的には、MATLAB/Simulinkなどのツールを使い、仮想空間上に創った試作品の動作をくり返しシミュレーションすることで、効率的な開発を実現します。

MBDの導入メリット

「モデル化」によって、制御システム開発にどのようなメリットが期待できるでしょうか?

従来手法では、試作するシステムの各パーツをさまざまな部署が、それぞれの人員と予算を使って、設計/実装/テストに取り組みます。そのあと、それらの各パーツを試作品として組み上げ、結合テストやシステムテストなどで評価します。その評価結果をそれぞれの部署が持ち帰り、次の試作に向けて改良を重ねます。この手法では、最初の試作でシステムを完全に動作させることは非常に難しく、何度も試作を重ねて完成度を上げていきます。

「モデル化」することで
  • 全工程を一元管理できるので、情報をすべての開発者または部署で効率的に共有できるようになります。
  • システム全体をシミュレーションできるようになり、試作回数を減らすことで時間とコストを削減できます。
  • モデルから自動でソフトウエアやハードウエアのコードを生成できるので、人為的なミスを削減できます。

※ MATLAB/Simulinkなどで作った「モデル」は、複雑な演算や処理をブロック線図で表現でき可読性が高いので、「動く仕様書」とも言われています。

下図に示すように、従来の手法では結合テストの段階にならないと全体の評価ができません。評価で問題がでれば、結果を設計に戻して試作を重ねます。ようやく結合テストを通過できても、システムテストで問題が出ればさらに大きな規模で設計に戻っていきます。システムの規模が大きくなればなるほど、時間とコストのダメージは大きくなります。
従来の開発V字モデル
従来の開発V字モデル
「モデル化」により、下図に示すように設計の早い段階からシミュレーションによる評価が可能になります。それぞれのパーツの設計が進むにつれて、その評価の精度は上がっていき、少ない試作回数でシステムテスト完了にたどり着けるようになります。
MBD導入後の開発V字モデル
MBD導入後の開発V字モデル

MBD導入時の課題と対策

これらたくさんのメリットをもつモデルベース開発ですが、運用が定着するまでは設計工程のボリュームが増えていきます。ですので、導入時の影響を事前に考慮し、設計部門全体でモデルベース開発に取り組む必要があります。
 
  • V字モデルのテストを想定して、設計の初期段階に負荷をかける(フロントローディング)手法へ転換していくように人員を配置します。
  • モデルの知見を持った人材を全工程に配置していきます。
  • 各工程間で、モデル管理のルール設定(インターフェース仕様やバージョン管理など)が必要です。
  • 「過去の資産」(従来の仕様書やソースコード)の「モデル化」も必要に応じて行います。
  • 最初から全工程に導入するのは難しいので、部分的あるいは段階的な導入を推奨します。

三栄ハイテックスの取り組み

三栄ハイテックスは、業界に先駆けいち早くモデルベース開発を導入して研究、開発を行っています。モデルベース開発を活用した新しい提案や、自社のモデルベース開発の研修カリキュラムによるモデルベース人材の育成などを通じて、さまざまなお客さまのニーズにお応えするよう取り組みを続けています。