半導体業界初心者向け 電源ICとは?
2026年02月13日
- LSI設計
半導体業界に新しく足を踏み入れた方や、電子機器の基礎技術を学びたい方に欠かせない知識の一つが「電源IC」です。私たちの生活を支えるスマートフォンやPC、家電製品といったあらゆる電子機器の心臓部で「電力」を司るこの部品は、製品の安定稼働を支える重要な役割を担っています。
本記事では、電源ICの基本機能や種類、最新の技術動向について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
本記事では、電源ICの基本機能や種類、最新の技術動向について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
※ IC:Integrated Circuit /集積回路
電源ICとは?
電気製品の安定稼働を支える基盤技術
電源ICとは、電子機器が必要とする電力を安定的に供給する「電気の調整役」です。コンセントやバッテリーからの電気を、各機器が使いやすい形に変換・調整する役割を持っています。
電源ICの定義と身近な例
電源ICとは、電子機器が必要とする電力を安定的に供給する機能を持つ集積回路のことです。例えば、家庭用コンセントやバッテリーから供給される電力を、家電製品やパソコン、スマートフォンなどの各機器が正常な状態で動作するために、適切な電圧や電流に調整して供給する役割を担っています。
スマートフォンなどの充電に使うUSB充電器を例にとると、AC100V(交流)を整流器や平滑回路を介して直流電圧に変換します。その後、USB規格に沿った電圧を出力するために、電源ICを使って特定の電圧に安定化させて出力します。
なお、市場で一般的に流通している電源ICにはDCDCコンバータと呼ばれる直流電源の電圧を変換するための装置や部品(リニアレギュレーター、スイッチングレギュレーターなど)があります。また、ACDCコンバータと呼ばれるコンセントなどの交流電圧(AC)を、電子機器で使える直流電圧(DC)にするための部品(スイッチングレギュレーター)もあります。
スマートフォンなどの充電に使うUSB充電器を例にとると、AC100V(交流)を整流器や平滑回路を介して直流電圧に変換します。その後、USB規格に沿った電圧を出力するために、電源ICを使って特定の電圧に安定化させて出力します。
なお、市場で一般的に流通している電源ICにはDCDCコンバータと呼ばれる直流電源の電圧を変換するための装置や部品(リニアレギュレーター、スイッチングレギュレーターなど)があります。また、ACDCコンバータと呼ばれるコンセントなどの交流電圧(AC)を、電子機器で使える直流電圧(DC)にするための部品(スイッチングレギュレーター)もあります。
※ リニアレギュレーター: 電圧を熱として捨てて制御する方式です。効率は低いですが、回路構成がシンプルでノイズが極めて少なく、高品質な電源が必要な箇所に適しています。
※ スイッチングレギュレーター: スイッチの高速ON/OFFにより電圧を変換する方式です。回路構成は複雑でノイズも発生しますが、変換効率が非常に高く、発熱を抑えて大きな電力を供給できます。一般的に「DCDCコンバーター」と言えばこの方式を指します。
※ スイッチングレギュレーター: スイッチの高速ON/OFFにより電圧を変換する方式です。回路構成は複雑でノイズも発生しますが、変換効率が非常に高く、発熱を抑えて大きな電力を供給できます。一般的に「DCDCコンバーター」と言えばこの方式を指します。
なぜ電源ICが必要なのか
安定供給と負荷変動への対応
電源ICは、入力電圧が変動したり、機器の使用状況が変わったりしても、常に一定の電圧を供給し続けるために必要です。これにより、繊細な半導体部品の故障や誤動作を防ぎます。
電圧を一定に保つ重要性
電源ICの主要な役割は、入力電圧の変動や接続される機器(負荷)が消費する電流の変動にかかわらず、機器の動作に必要な安定した電圧を供給することです。これにより精密な電子回路の誤動作を防ぎます。
一般的に電子機器の電源系統は電圧が一定ではありません。例えば、バッテリーで駆動する機器の場合、バッテリーから消費された電流により残量が減少すると入力電圧は徐々に低下します。また、機器内部のCPUなどが高負荷で動作し消費電流が急激に増減すると、一時的に出力電圧が変動することもあります。
このような変動は、微細な半導体で構成されるCPUやマイコンなどの精密な電子回路にとっては、誤動作や性能低下の原因となります。そのため、入力変動や出力負荷によらず出力電圧を一定に保つ制御を行う電源ICが必要となります。
一般的に電子機器の電源系統は電圧が一定ではありません。例えば、バッテリーで駆動する機器の場合、バッテリーから消費された電流により残量が減少すると入力電圧は徐々に低下します。また、機器内部のCPUなどが高負荷で動作し消費電流が急激に増減すると、一時的に出力電圧が変動することもあります。
このような変動は、微細な半導体で構成されるCPUやマイコンなどの精密な電子回路にとっては、誤動作や性能低下の原因となります。そのため、入力変動や出力負荷によらず出力電圧を一定に保つ制御を行う電源ICが必要となります。
※ CPU:Central Processing Unit/PC(パソコン)などに載っている中央処理装置です。
※ マイコン:CPUとメモリやインタフェースなどの周辺回路が一つになったマイクロコントローラーです。
※ マイコン:CPUとメモリやインタフェースなどの周辺回路が一つになったマイクロコントローラーです。

電源ICの種類と動作原理
スイッチングレギュレーターについて深堀り
電源ICにはいくつかの種類があり、特に「スイッチングレギュレーター」は高効率な電力変換が可能です。用途に合わせて電圧を下げる「降圧」、上げる「昇圧」、自動で切り替える「昇降圧」を使い分けます。
各方式の特徴とメリット・デメリット
電源ICには、ACDC、リニアレギュレーター、スイッチングレギュレーター、チャージポンプなどいくつかの種類があります。リニアレギュレーターは低ノイズで回路が簡単、スイッチングレギュレーターは高効率など特徴に違いもあり、必要に応じて使い分けます。
スイッチングレギュレーターについては動作原理により、電圧を下げる降圧(Buck)、電圧を上げる昇圧(Boost)、そしてこれらを自動で切り替える昇降圧(Buck-Boost)などの方式があり、高効率な電力変換を実現します。それぞれの方式についての主な特徴、メリット・デメリットは以下の通りです。
スイッチングレギュレーターについては動作原理により、電圧を下げる降圧(Buck)、電圧を上げる昇圧(Boost)、そしてこれらを自動で切り替える昇降圧(Buck-Boost)などの方式があり、高効率な電力変換を実現します。それぞれの方式についての主な特徴、メリット・デメリットは以下の通りです。
降圧(Buck)
| 主な特徴 | 入力電圧よりも低い電圧を生成。 |
|---|---|
| メリット | 高効率で発熱が少ない。 回路はシンプル。 |
| デメリット | 入力電圧以下しか出せない。 |
| 代表的な用途 | PC、スマートフォンなどの内部電源、ACアダプタの2次側など |
昇圧(Boost)
| 主な特徴 | 入力電圧よりも高い電圧を生成。 |
|---|---|
| メリット | 電池1本(1.5V)から高電圧を生成可。 回路はシンプル。 |
| デメリット | 入力電圧以下に下げられない。 |
| 代表的な用途 | バッテリー駆動機器や、LED駆動回路など |
昇降圧(Buck-Boost)
| 主な特徴 | 降圧と昇圧の両機能を備えている。 |
|---|---|
| メリット | 電池が消耗して電圧が下がっても、一定の電圧を維持できる。 |
| デメリット | 効率はやや低い。 回路は複雑で大きくなりやすく、部品点数が増えるためコストも高い。 |
| 代表的な用途 | 車載機器、ソーラー充電、リチウム電池駆動機器など |
電源ICはどこで使われているのか(活用事例)
PCやスマートフォン、IoT機器など、あらゆる電子機器の中で電源ICは活躍しています。特に複雑な機能を持つ製品では、複数の電源ICを組み合わせて最適な電力を供給しています。
パソコンとIoT機器での使用例
バッテリー駆動のモバイル機器、PC、IoT(モノのインターネット)デバイス、そして車載用途まで、電源ICは多様な電子機器の内部で電力供給の最適化を担っており、幅広いアプリケーションで使用されています。下図は家庭用コンセントから電源供給することを想定したパソコンの簡易的な電源構成図です。電源ICの用途について、電源系統をもとにリニアレギュレーターや降圧、昇圧スイッチングレギュレーターの活用例について紹介します。

コンセントから供給されるAC電源(例:AC100V)はACDCにより直流電圧(例:DC16V)に変換されます。その後、内部ではCPUやGPU・オーディオ回路など各部品が搭載されており、降圧スイッチングレギュレーターやリニアレギュレーターなどにより複数の異なる電圧(例:1.2V、2.85V)を作り出す必要があります。また、ディスプレイのバックライト(LCD パネル)の駆動には高い電圧(例:30.0V)が必要となる場合があり、その時は昇圧スイッチングレギュレーターが使用されます。パソコンのように多機能な製品では、複数の電源ICが連携して各部品に最適な電力を供給して動作させる必要があります。次に入力電圧が変動するようなエナジーハーベスト(環境発電)など、IoT向け環境測定基板を例に、昇降圧スイッチングレギュレーターの活用例について紹介します。
※ GPU:Graphics Processing Unit/コンピューターの画像や動画の描画を高速化する画像処理装置です。

本ボードでは昼間太陽が出ている時は太陽光パネルから得た電力を外部バッテリーに充電しつつ、リニアレギュレーターやスイッチングレギュレーターを通して必要なデバイス(照度センサー、温湿度・気圧センサー、マイコン(BLE+MCU)など各種測定デバイス)に電圧(例:2.0V)を供給します。
夜間になると太陽光パネルからの供給が止まり充電されたバッテリーに切り替わります。昼間の充電が不十分である場合、夜間の消費分を賄えず必要電圧以下となることもありますが、昇降圧スイッチングレギュレーターを使用することで電圧低下を気にせず稼働時間を延ばすことが可能となります。
夜間になると太陽光パネルからの供給が止まり充電されたバッテリーに切り替わります。昼間の充電が不十分である場合、夜間の消費分を賄えず必要電圧以下となることもありますが、昇降圧スイッチングレギュレーターを使用することで電圧低下を気にせず稼働時間を延ばすことが可能となります。
電源ICの未来
グリーンテクノロジーとIoTの進化
脱炭素社会の実現に向け、電源ICにはさらなる「省エネ性能」が求められています。特に、環境エネルギーを利用するIoT機器の普及に伴い、わずかな電力でも動く技術が重要になっています。
エナジーハーベスティングと省電力化
現在、世界的にグリーンテクノロジーの推進(脱炭素社会の実現)が加速しています。環境負荷低減を目指す流れにおいて、電源ICはエネルギー効率の観点から非常に重要な役割を担います。近年ではエナジーハーベスティング(環境発電)を利用したIoT製品も増加傾向にあり、電池交換の手間を省き持続可能なIoT機器が増えていくと予想されます。ここで使用される電源ICとしては、太陽光、熱、振動といった環境中の微弱なエネルギーを収穫し電力として利用できるように、安定した電圧に変換できる技術が必要になります。
環境から得られる電力は非常に不安定で微弱なものです。そのため、今後は超低消費電力化や高効率な電力変換が重要な技術ポイントとなります。
環境から得られる電力は非常に不安定で微弱なものです。そのため、今後は超低消費電力化や高効率な電力変換が重要な技術ポイントとなります。
電源ICは、入力された電力を安定した動作電圧に変換し、電子機器の安定性と信頼性を担保する上で不可欠な半導体部品です。モバイル機器から産業用、車載用途まで幅広い分野で活用されています。今後は、脱炭素社会の実現やIoTの普及を背景に電源ICの需要が急増すると見込まれています。電源ICのさらなる超低消費電力化や高効率化が期待され、次世代のテクノロジーを支える「縁の下の力持ち」として、今後もさらなる進化を続けていくでしょう。